「繰り上がり」や「繰り下がり」のある足し算、なぜかうまく理解できない…。
「どう教えればいいのか分からない」と悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。
実はこの“つまずき”、ちょっとした教え方の工夫で驚くほどスムーズに解消できるんです。
この記事では、苦手な子でも楽しく学べる教え方と、その具体例をわかりやすく解説していきます。
繰り上がり・繰り下がりの足し算が苦手な子は多い
「うちの子だけが理解できていないのでは…」と思っていませんか?
でも大丈夫。繰り上がりや繰り下がりのある足し算に苦手意識を持つ子はとても多いんです。特に小学1〜2年生では、「数の感覚」がまだ発達の途中。頭の中で数を操作するのは、実は大人が想像する以上に難しい作業なのです。
計算ドリルで繰り返しても間違いが多い、指を使っても混乱する…。そんなときは、子どもが「なぜこの数になるのか」をイメージできていないサイン。つまり、計算の“手順”は覚えていても、“意味”が腑に落ちていないのです。
次の章では、こうしたつまずきが起きる背景について、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
つまずきの背景にある「抽象的な数字」の壁
子どもたちが繰り上がり・繰り下がりの計算につまずく理由の一つに、「数字が抽象的すぎる」という問題があります。
私たち大人は「8+7=15」と聞けば、自然と答えが浮かびますが、小さな子どもにとっては「8って何?」「7ってどういうこと?」といった“数のイメージ”が曖昧なことが多いのです。
そもそも、数という概念は見えないもの。実際のモノ(りんごやおはじき)を通して経験していなければ、「8+7」の意味を理解するのは難しいのです。
だからこそ、子どもたちが「数字」ではなく「操作としての加算や減算」を感覚でつかむようになるには、ある程度の時間と工夫が必要になります。
この章では、そうした“数字の抽象性”が、どのようにつまずきにつながっているのかを、より具体的に見ていきましょう。
「10のまとまり」が感覚でつかめていない
繰り上がり・繰り下がりの計算が難しい理由のひとつは、「10のまとまり」という感覚がまだ育っていないことにあります。
たとえば、「8+7」という計算。これは、「8に2を足して10にし、残りの5を加えて15」という流れで処理するのが一般的です。しかし、この「10をつくる」考え方は、“10が区切りとして便利である”**という理解があって初めて成り立ちます。
まだ10という数を“目で見て・手で触って”理解していない子にとっては、「なぜ2を足すのか?」「残りの5ってなに?」という疑問が次々に浮かび、混乱を招きます。
つまり、抽象的な計算ルールの前に、「10という数がひとかたまりとして便利である」という経験を積むことが重要なのです。
この感覚を身につけるには、「10個の積み木」「おはじき」「十進ブロック」などの具体物を使って、“10”を体感させることが近道になります。
数字だけの筆算が理解を妨げる理由
筆算はとても便利な計算方法ですが、実は「繰り上がり」「繰り下がり」でつまずいている子にとっては、混乱の元になってしまうこともあります。
なぜなら、筆算では「繰り上がりの1」や「繰り下がりの1」が小さく書かれているだけで、その意味や動きが視覚的に伝わりづらいからです。子どもは「なぜ1を書いたのか?」「どの数に足すのか?」がわからず、形だけ真似しても意味が追いついていない状態になってしまいます。
さらに、繰り下がりの場面では「上から1を借りる」という操作が入り、見えない計算が頭の中で必要になります。これがまだ「数の移動」のイメージが持てていない子どもにとっては、まさに“ブラックボックス”。ルールを暗記しても、腑に落ちないまま間違えてしまうのです。
こうしたことから、数字だけで筆算を教えるのではなく、動きや考え方を視覚化した説明が必要不可欠です。
まずは「視覚的」に理解させることが大切
繰り上がり・繰り下がりの計算でつまずいている子どもにとって、数字だけの説明はなかなか頭に入ってきません。そんなときこそ、「視覚的なアプローチ」が効果を発揮します。
実際に目で見て、手で触れて、動かしながら理解することで、「なるほど、こういうことか!」という納得感を得やすくなります。これは、まだ抽象的な概念を扱うのが難しい年齢の子にとって、とても大切なプロセスです。
たとえば、「さくらんぼ計算」や「おはじき」「十進ブロック」などは、数のまとまりや分解のイメージを視覚的に捉えるのにぴったりのツールです。視覚的な補助があることで、計算の流れが“見える化”され、つまずきポイントを自然に乗り越えることができます。
次の章では、そうした視覚教材をどう使えばよいのか、具体的な方法とコツをご紹介します。
さくらんぼ計算・ブロック教材の活用法
「さくらんぼ計算」は、繰り上がり・繰り下がりの仕組みを理解するうえでとても効果的な方法です。この方法は、数を「10といくつ」に分解する練習を通して、数の合成と分解の感覚を身につけることができます。
たとえば、「8+7」の場合、8に2を足して10をつくり、残りの5を加えるという操作を、図の中で“さくらんぼ”のように枝分かれさせて視覚化します。目で見て確認できるので、手順だけでなく「なぜそうするのか」が自然と理解できるのです。
ブロック教材やおはじき、10個ずつまとまる玉そろばんなどを使えば、子どもが自分で操作しながら体験的に学べます。特に、繰り下がりの引き算では、「1を借りてくる」という感覚を実物で見せることで、直感的に理解が進みます。
次の項では、そうした視覚的な道具を家庭でどのように活用できるかを詳しく解説します。
「数の分解」を楽しく学べるコツ
子どもが「数の分解」を楽しみながら身につけるには、ゲーム感覚の導入が効果的です。
たとえば、「10をつくるペアゲーム」や「おはじきでいくつに分けられるかな?」といった遊びを通じて、数を自在に扱う力が養われていきます。
また、クイズ形式で「7は、いくつといくつ?」と聞いてみたり、「10になる組み合わせをたくさん見つけよう!」といった競争型の課題も盛り上がります。こうした取り組みは、ただの暗記ではなく、「自分で考えて答えを出す」という思考の習慣づけにもつながります。
加えて、子どもの答えを「そうそう!8と2で10になるね」と声に出して褒めることで、理解とやる気の両方が高まります。
家庭でもできる簡単な補助教材の例
市販の教材がなくても、家庭で十分に工夫できます。
例えば、10円玉やレゴブロックなどを使って「10のかたまり」をつくり、「これは8個、ここにあといくつあれば10になるかな?」と問いかけるだけで、立派な“視覚教材”になります。
紙とペンでさくらんぼ計算の図を描き、数字を自分で書き込ませるのも効果的です。
最近では無料で印刷できるプリントサイトも充実しているため、必要な問題だけをピンポイントで使えるのもポイントです。
さらに、YouTubeなどの動画教材も活用すれば、繰り上がり・繰り下がりの計算を視覚的かつストーリー仕立てで楽しく学べます。
「繰り上がり」と「繰り下がり」の違いを意識させよう
計算の仕組みをきちんと理解するには、「繰り上がり」と「繰り下がり」は別の考え方であることを明確にする必要があります。どちらも「1を足す・借りる」という共通点がある一方で、その意味と動きは真逆です。
多くの子どもがここで混同してしまい、足し算のはずなのに引いてしまったり、その逆をしてしまったりします。
そこで大切なのは、動作とイメージをセットにして教えること。
以下でそれぞれの特徴を解説していきます。
繰り上がりは「1を隠して加える」操作
繰り上がりとは、1桁の足し算で合計が10を超える場合、10の位に“1”を加える処理のことです。
たとえば「8+7」の場合、8と7を足すと15になりますが、筆算では「5」と書いて「1を繰り上げる」とします。ここで重要なのは、その“1”がどこから来ているのかをイメージできるかどうかです。
視覚的に理解させるには、「10のまとまりをつくったことで1ができた」という具体物による説明が効果的です。おはじきや積み木などで、「10をつくって、残りがいくつあるか」を示すと、頭の中で“1が上にいく”意味がつかめるようになります。
10をつくる意識がないと混乱しやすい
「なぜ10をつくるのか?」という意識がないまま暗記で繰り上がりを学ぶと、計算が“丸暗記”になります。すると少しでも複雑になると混乱しやすく、応用がききません。
大事なのは、10という数字の「便利さ」や「区切りとしての意味」を体感すること。たとえば、10円玉で買い物をする遊びや、ブロックで10個の山をつくるゲームなどで、「10になると新しいまとまりができる」という体験を積ませましょう。
この“10をつくる”意識があることで、繰り上がりの仕組みがしっかり根づき、自然と筆算のルールも腑に落ちていきます。
繰り下がりは「1を借りて引く」操作
繰り下がりは、引き算の場面で「上の位から1を借りる」操作です。たとえば「13−8」のような問題では、1の位で「3から8は引けない」ため、10の位から1を“借りて”13を“13”として扱う、という処理になります。
この操作は、目に見えない動きが多いため、子どもがイメージを持ちにくいのが特徴です。その結果、「どこから1を借りたのか」「なぜ10を足すのか」が理解できず、単なる“ややこしいルール”として記憶されがちです。
ここでも具体物が役立ちます。10本のストローを1本ずつ抜いていく、あるいは10個の玉を1の位に渡してあげるといった動作を通して、数の移動を目で見せることがポイントです。
数の移動のイメージをつかむ指導法
繰り下がりの理解を深めるには、「数が上から下に移動してきた」という感覚をつかむことが大切です。
そのためには、10円玉や10本の線を書いた紙などを使って、「この1をこっちに移動させるよ」と実際に“交換”する動きを見せましょう。子ども自身に操作させることで、数のやりとりを身体で覚えていきます。
さらに、「1を借りたけど、10として渡したんだよ」「だからここに10を足して引けるんだね」といった**声かけによる“意味づけ”**も非常に効果的です。数字の移動には理由があることを丁寧に伝えることで、無理なく繰り下がりの計算に取り組めるようになります。
つまずきやすい子どもには段階的に教える
繰り上がり・繰り下がりの足し算が苦手な子どもには、いきなり筆算をさせるのではなく、段階的に理解を深めていくことが大切です。
一度つまずいた内容を、何度も間違え続けると、子どもは「自分は算数ができない」と感じてしまい、学習そのものへの意欲をなくしてしまうこともあります。だからこそ、成功体験を少しずつ積み重ねる構成で教えていくことが効果的です。
ここでは、3つのステップに分けて、実際にどのように教えていけばよいかをご紹介します。
段階①:具体物を使って実演する
まずは、数そのものを「見て・触って・動かして」理解できるようにします。
たとえば、おはじき・10玉そろばん・レゴ・100均のおもちゃコインなどを使って、「10になるにはいくつ必要か」「10をつくってから残りをどうするか」を実演しましょう。子どもが自分で動かして数えることで、頭の中だけで考える負担が減り、理解が一気に深まります。
「手で動かす → 目で見る → 声に出す」という3つの働きかけを同時に行うのがコツです。
段階②:視覚で理解させる問題を出す
次のステップでは、絵や図を使った視覚的な問題に取り組みます。
例えば「さくらんぼ計算」や「数直線を使った問題」など、数の動きが“目に見える”教材を使って、計算の流れを体感してもらいます。プリント学習であっても、イラストがあるものを選ぶと、数字の意味がイメージしやすくなります。
また、「どの数とどの数を合わせると10になる?」といった問いかけを繰り返し、数の感覚を育てていきましょう。
段階③:言葉にして説明させて定着を図る
最後のステップは、「どうしてそう計算したの?」と子ども自身に説明させることです。
人に説明できるということは、内容をしっかり理解している証拠です。最初は言葉に詰まっても構いません。「8に2を足して10をつくったよ。それから残りの5を足したから15になった」など、自分の言葉で言えるようになれば、知識が“自分のもの”として定着していきます。
もし説明が難しければ、大人が「こういうことかな?」と優しくリードしながら言葉にしてあげてください。親子で対話しながら学ぶことで、学びの効果は倍増します。
教えるときに意識したい3つのポイント
どんなにわかりやすい教材を用意しても、子どもが「わからない…」と感じていたら、学習は進みません。大切なのは、「教え方の工夫」だけでなく、子どもの心に寄り添う姿勢です。
ここでは、繰り上がり・繰り下がりの計算を教えるうえで、保護者や先生が意識しておきたいポイントを3つ紹介します。
「できた!」の成功体験を積ませる
まず大切なのは、小さな成功体験を積み重ねること。
「できた!」という実感が持てると、子どもの自己肯定感が高まり、学習に前向きになります。たとえば、「5+5=10」のような簡単な問題からスタートし、徐々に難易度を上げていくことで、達成感を感じながら学んでいけます。
正解したときは、すかさず「すごいね!」「ちゃんと考えられたね」と声をかけましょう。その一言が、次の挑戦へのエネルギーになります。
「わからない」が言える安心感をつくる
子どもがつまずいたとき、「そんなの簡単でしょ」「なんでわからないの?」と言ってしまうと、それがプレッシャーになってしまいます。
学習の場では、「わからない」が言える空気づくりがとても大切です。「間違えても大丈夫」「何度でも一緒にやろうね」といった声かけを心がけることで、子どもは安心して学習に向き合えるようになります。
安心感があるからこそ、本当の理解が生まれます。
焦らず、繰り返しの演習で育てる
繰り上がり・繰り下がりの計算は、1回や2回で身につくものではありません。
大人にとっては簡単に思える計算も、子どもにとってはとても高度な認知処理です。理解に時間がかかるのは当然のことなので、焦らず、繰り返し練習することが重要です。
少しずつできる問題を増やし、「できる」「わかる」の感覚を大切にしてあげましょう。最終的には、自分で考えて解けるようになる日が必ず来ます。
