「敬語ってむずかしい…」「なんでそんな言い方するの?」
子どもに敬語を教えようとしたとき、こんな言葉に戸惑った経験はありませんか?
大人にとっては当たり前のように使っている敬語も、子どもにとっては“聞き慣れない特別な言葉”に感じられるもの。特に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の違いとなると、言葉の意味だけでなく、使う場面まで考えなければならず、混乱してしまう子も多いです。
でもご安心ください。敬語は、無理に覚え込ませるのではなく、少しずつ「体験」しながら身につけていくことがコツです。
この記事では、「敬語が苦手」と感じている小学生の子どもでも、楽しみながら自然と敬語に親しめるようになる5つのやさしいステップをご紹介します。
親子で一緒に取り組むことで、ただ敬語を覚えるだけでなく、相手を思いやる心や丁寧なコミュニケーションの力も育っていきます。
さあ、今日から“ことばの使い方”を少しずつ変えてみませんか?
なぜ子どもは敬語が苦手なのか?その理由を理解しよう
敬語を覚えられないのは、子どもの言語能力が足りないからではありません。まずは「なぜ難しいと感じるのか?」という視点を持つことで、よりやさしく、効果的に教えられるようになります。
日常会話で使う機会が少ない
子どもが敬語を身につけにくい背景には、まず“触れる機会の少なさ”があります。どんな場面でつまずきやすいのか、見ていきましょう。
家庭内での言葉づかいは子どもに大きく影響する
子どもにとって、もっとも多くの言葉を吸収する場所は「家庭」です。
そのため、普段の生活の中で敬語に触れる機会が少ないと、「聞いたことはあるけど意味がわからない」「どこで使えばいいかわからない」という状態になりがちです。
特に、親子の会話がタメ口ベースの場合、急に「先生には“よろしくお願いします”って言うんだよ」と言われてもピンと来ないことが多いのです。
まずは家庭の中で、「お手伝いありがとうね」「〇〇してくれて助かります」などの丁寧な言い方を意識的に取り入れるだけでも、子どもは自然と耳に慣れていきます。
「敬語は特別な言葉」というイメージが抵抗感に
敬語を「普段とは違う特別な言葉」として教えてしまうと、子どもは緊張したり、「難しいもの」と感じてしまいがちです。
たとえば、「絶対に間違えないでね」「ちゃんとした場で使う言葉だからね」といった伝え方は、かえってプレッシャーになります。
すると子どもは、「使わない方が安心」「失敗したら恥ずかしい」という気持ちを抱き、敬語そのものに苦手意識を持ってしまうのです。
敬語は“相手にやさしく話しかけるための言葉”であり、完璧でなくても気持ちが伝われば十分、という安心感を伝えることが、第一歩になります。
敬語を楽しく学ぶ5つのやさしいステップ
敬語の習得は、一度に完璧を目指すものではありません。子どもの年齢や性格に合わせて、楽しみながら少しずつ慣れていくプロセスが大切です。ここでは、家庭で無理なく取り組める5つのステップをご紹介します。
① まずは「ありがとう」などの丁寧語から慣れる
敬語と聞くと難しい表現ばかりが思い浮かびますが、最初の一歩はもっと身近でかんたんでOKです。まずは「丁寧語」を中心にした声かけを習慣づけていきましょう。
日常会話に「です・ます」を少しずつ取り入れる
最初から「尊敬語」「謙譲語」に挑戦しようとすると、子どもはつまずいてしまいます。だからこそ、一番やさしくて使いやすい丁寧語から始めるのがおすすめです。
たとえば、「おはよう」ではなく「おはようございます」、「これちょうだい」ではなく「これ、ください」といった言い方を、大人がモデルとして少しずつ増やしていきます。
「今日は“ます”を使って話してみようチャレンジ」など、ちょっとした遊び心を入れると、子どもも楽しく意識してくれるようになります。
「ありがとう日記」で言葉の変化を体感する
「ありがとう」という言葉は、敬語を学ぶうえでとてもよい入り口になります。子どもにとっても身近で、意味がわかりやすく、気持ちも込めやすいからです。
そこでおすすめなのが、「ありがとう日記」という取り組みです。
その日の中で「ありがとう」と思ったことを1つだけ、短く書いてもらいます。
最初は「ママがジュースくれた。ありがとう」などでOK。慣れてきたら、「お手伝いしてくれて、ありがとうございました」など、少し丁寧な言い回しにしてみようねと促します。
「ありがとうって言われると、うれしいよね」と声をかけることで、ただの言葉が“気持ちを伝えるツール”であることに気づき始めます。
書く・話す・聞くを日々少しずつ繰り返すだけで、敬語への抵抗が和らぎ、自然な使い方が身についていきます。
② ロールプレイで「使う場面」をシミュレーション
子どもが敬語を実際の場面で使えるようになるには、「どういう場面で使うのか」を体感させることがとても大切です。そのための効果的な方法が「ロールプレイ(ごっこ遊び)」です。
お店屋さんごっこで敬語を使ってみる
「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」など、お店で耳にする言葉は、敬語を学ぶきっかけとしてぴったりです。子どもと一緒に「お店屋さんごっこ」をすることで、自然と丁寧な言い方に親しめます。
たとえば、
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子どもが店員役:「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」
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親が客役:「このお菓子をください。いくらですか?」
といった会話を楽しみながら行います。最初は台詞を紙に書いて渡してもOKですし、「ちょっと敬語で言ってみようか?」とゲーム感覚で促すのもおすすめです。
遊びの中で使った言葉は記憶に残りやすく、実生活での応用力も自然と育っていきます。
親が「お客さん役」になると子も楽しめる
ロールプレイをごっこ遊びとして自然に楽しませるには、親が積極的に「演じる側」に回ることがとても効果的です。
たとえば、お店屋さんごっこをするときに、親が本気で「いらっしゃいませ〜!今日はおすすめありますか?」などと明るくやり取りすると、子どもはその雰囲気に引き込まれ、自分も“役になりきって”敬語を使うようになります。
このとき大事なのは、間違えても笑って受け止める空気感です。
「それもおもしろいね!でも“ありがとうございます”って言ったらもっと丁寧に聞こえるよ」と、自然に伝えることで、子どもは抵抗感なく正しい表現を吸収していきます。
親が“遊びの相手”ではなく“遊びの仲間”として関わることで、敬語の習得がぐっと身近なものになります。
③ ゲームやカードで「使い分け」を遊びながら学ぶ
敬語はルールとして覚えるよりも、遊びの中で繰り返し触れることで自然に身につくものです。ここでは、楽しく敬語の使い方を学べるアイデアをご紹介します。
「どっちが敬語?」クイズで違いを理解
敬語に対する苦手意識をなくすには、堅苦しい説明よりも、クイズ形式で「どちらが丁寧かな?」と選ばせる方法が効果的です。
たとえば、
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A:「これ食べたい」
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B:「こちらをいただきたいです」
このような2択を出して、「どっちが敬語かな?」と問いかけると、子どもは考える癖がつきます。正解したときは「お〜、よく聞いてたね!」とポジティブなリアクションでやる気を引き出しましょう。
ゲーム感覚で繰り返すことで、言葉の違いに気づく力が育ち、「どんな場面でどんな表現が適しているか」が少しずつ見えてくるようになります。
フラッシュカードで繰り返し反復
敬語の言い回しに慣れるには、繰り返し目にして、声に出すことがとても大切です。そのために効果的なのが、フラッシュカードを使った学習法です。
カードには、たとえば表に「食べる」、裏に「召し上がる」や「いただく」などの敬語表現を書いておきます。
「この言葉、ていねいに言うとどうなる?」と問いかけながら使えば、子どもはゲーム感覚で反復でき、自然と表現のパターンが頭に入っていきます。
特におすすめなのは、カードの分類ゲームです。尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つの山に分けて並べることで、違いを“見える化”でき、整理しやすくなります。
手作りカードなら親子で一緒に作れる楽しさもあり、「これ、敬語バージョンで言うと?」と日常会話でも応用しやすくなるのがポイントです。
④ 子どもに合わせた「敬語表現ノート」をつくる
敬語を“自分の言葉”として使えるようになるには、子どもが日常的に使いそうな言葉をベースに表現を整理しておくことが効果的です。そこで役立つのが、オリジナルの「敬語ノート」です。
学校や家庭でよく使う例文を書きためる
市販のテキストよりも、子ども自身が使いそうなフレーズを中心にした例文集を作ると、実用的で記憶にも残りやすくなります。
たとえば、
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「〜して」→「〜していただけますか?」
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「ありがとう」→「ありがとうございます」
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「ごめん」→「申し訳ありません」
など、普段使う言い回しを親子で相談しながら丁寧な表現に書き換えていきます。
自分で書いたものを、あとから見返して使えるようになるので、**“自分専用の敬語辞典”**のような役割を果たしてくれます。
短い文でもOK。1日1フレーズずつ増やすだけで、気づけば立派な敬語ノートができあがります。
間違いを否定せず、「こんな言い方もあるよ」で導く
敬語の学習で大切なのは、間違いを指摘することよりも、正しい言い方へ“自然に導く”姿勢です。
子どもが「これやって」と言ったときに、「“これお願いします”って言おうね」とすぐに直すのではなく、「そう言うとき、“お願いします”って言ってみると、もっとていねいに聞こえるかも」とやんわり提案する方が、子どもは素直に受け入れやすくなります。
間違いを「悪いこと」として伝えてしまうと、言葉に対して不安を抱えやすくなり、話すこと自体に消極的になってしまうことも。
むしろ、「いろんな言い方があるんだね」と言葉の多様性を楽しませることが、長い目で見た“ことば育て”につながります。
親子で一緒に「こんな言い方もできるね」と発見を楽しむことで、敬語はぐっと身近なものになります。
⑤ 実際の場面で「敬語が使えた」経験を重ねる
これまでに練習した敬語表現は、実際の生活の中で“使ってみる”ことで初めて定着します。リアルな場面で使えた成功体験は、子どもにとって大きな自信になります。
店員さんや先生へのあいさつをきっかけに
敬語を使うタイミングとしてもっとも身近なのが、お店や学校など、家庭の外でのやりとりです。
たとえば、コンビニで「お願いします」「ありがとうございます」と言えたときや、先生に「失礼します」と挨拶できたときは、「今の、敬語ばっちりだったね!」と声をかけてあげましょう。
そうしたポジティブなフィードバックを重ねることで、子どもは「敬語ってかっこいい」「使うと褒められる」という良い印象を持ち始めます。
緊張して言えなかったときも、「次またチャレンジしてみよう」と応援してあげることで、挑戦する気持ちが育っていきます。
使えたら一緒に喜ぶことで自信につながる
子どもが敬語を実際に使えたときは、その瞬間を見逃さずに一緒に喜ぶことがとても大切です。
「ありがとうって言えたね!」「“お願いします”って自然に出たね」など、小さな気づきをその場で伝えることで、子どもは「できた!」という実感を得ることができます。
この“できた経験”の積み重ねは、言葉づかいに対する自信や、他人とのコミュニケーションへの前向きな気持ちを育てていきます。
たとえ間違えても、「挑戦したことがすごいよ」と言葉にしてあげれば、子どもは「またやってみよう」という意欲につながります。
敬語の習得は時間がかかるもの。だからこそ、できたときに一緒に笑顔になることが、何よりのモチベーションになります。
言葉づかいが変わると、周囲の反応も変わる
言葉はその人の印象を決める大きな要素のひとつです。子どもが敬語を使うようになると、周囲の大人や友達の反応も自然と変わってきます。
丁寧に話すことで信頼や好印象が得られる
たとえば、同じ内容でも「これやって」より「お願いできますか?」の方が、聞いている相手の気持ちはぐっと和らぎます。
敬語は、相手に配慮する姿勢が伝わる言葉なのです。
子どもが敬語を使って話しかけたとき、大人は「おっ、しっかりしてるな」「礼儀正しいな」と感じるもの。それがきっかけで、子どもに対する信頼感や安心感が高まります。
また、友達同士の中でも「ちゃんとしてるね」「やさしい言い方だね」と言われることが増え、自信につながっていきます。
相手を思いやる気持ちが行動にもあらわれる
敬語は単なる“言葉の形式”ではなく、相手を思いやる気持ちの表れです。
そのため、丁寧な言い方を学ぶことで、自然と子どもの中に「相手のことを考える」という視点が育っていきます。
たとえば、「手伝って」ではなく「手伝っていただけますか?」という表現を使うとき、子どもは無意識に「相手の都合を考える」ようになります。
また、「ありがとうございます」や「すみません」といった言葉が口ぐせになると、人との関わり方そのものがやわらかく、優しいものに変化していきます。
このように、敬語を学ぶことで身につくのは、言葉選びだけではなく、“相手との距離感を大切にする心”でもあるのです。
親子で取り組むからこそ身につくコミュニケーション力
敬語の習得は、ただの言葉の練習ではなく、親子の関わり方そのものを豊かにするチャンスにもなります。ここでは、親子で学ぶことの大きな意味について考えてみましょう。
「一緒に考える」が子どもの安心につながる
敬語を教えるとき、つい「これは間違い」「こう言いなさい」と“正しさ”を強調してしまいがちですが、子どもにとって何より安心するのは、「一緒に考えてくれる」存在です。
たとえば、「これって何て言ったら丁寧になるかな?」と親が子どもに相談するようなかたちで接すると、子どもは「間違えてもいいんだ」と思えます。
親子で“言葉の使い方”について対話する時間そのものが、コミュニケーション力を育てる土台になります。
敬語を覚える過程は、親が“教える人”になるより、“伴走する人”になることで、より深くあたたかい関係が築かれていきます。
小さな会話の積み重ねが子どもを育てる
敬語を教える特別な時間をつくらなくても、日常のちょっとしたやりとりの中に学びのチャンスはたくさんあります。
たとえば、「お手伝いしてくれてありがとうね」と声をかけるときに、「ありがとうございますって言ってみる?」と優しく促したり、誰かと挨拶を交わしたあとで「今の言い方、すごく気持ちよかったよ」と伝えたり。
こうした1つ1つの会話が、子どもにとっては“言葉と心の距離”を縮める経験になります。
そしてそれが積み重なっていくことで、敬語だけでなく、自分の思いをていねいに伝えられる子へと成長していくのです。
特別なことではなく、いつもの日常こそが、いちばんの学び場。そんなふうに敬語をとらえ直すと、親子の会話ももっとあたたかく豊かになります。
まとめ:敬語は「正しさ」より「やさしさ」から始めよう
敬語は、ただ“正しい言葉づかい”を覚えることが目的ではありません。
その本質は、相手を思いやる気持ちを、ことばで丁寧に表すことにあります。
「ちゃんと使わなきゃ」ではなく、「ちょっと言い方を変えるとやさしく聞こえるね」と、子どもと一緒に考えながら進めること。
それが、子どもにとっての“ことばの自信”を育てる第一歩になります。
大切なのは、失敗を責めず、できたときには一緒に喜ぶこと。
遊びや会話の中に少しずつ敬語を取り入れていけば、気づけば子どもは、自然とていねいな話し方を身につけていきます。
今日の一言が、未来の「思いやりのあるコミュニケーション」につながる。
そう思って、まずはできるところから、一緒に始めてみてくださいね。

